ぴぃこ、息を吸う

26歳会社を辞めた私の転職活動日記

好印象を脱ぎ捨てろ

この時期、学生の就職活動が再び活発化する。


5月の大手企業の採用からこぼれた学生たちが、中小企業内定を目指して夏休みに追い込みをかける。

就活生に盆も正月もない。

うだる暑さの中、黒スーツで決めた女子学生が電車で私の隣に座った。そして、次の駅からまた一人の黒ずくめ女子学生が向かいの席に座った。

二人とも、前髪をピンで留めて、セミロングの黒髪を後ろで一つに束ねている。勿論ヘアゴムも黒。

マンガを買ってウキウキ気分な帰りの電車だった私は、変な罪悪感を感じてしまった。


今を楽しんでないどころか、人生でもっともバカバカしいことに時間を費やしている人の前で人生楽しむのは気が引ける。


そう思っていると、向かいの就活生がエントリーシートをこれまた黒バッグから取り出して、書き込み始めた。ある項目の小さな枠に、めいっぱいペンを走らせる。

人生そんなんじゃ収まらない。


就活で1番嫌だったのが、この狭っ苦しいエントリーシートだ。小さい枠で「学生時代に力を入れたこと」「人生で一番嬉しかったこと」などを書かなければいけない。

就活までの人生22年間分、学生時代だけでも3年半分。

全部は勿論入りきらない。

ネタとしてはバイトや学業、サークル、ボランティア、あとはインターンとか。

その中で、頑張ったことや、自分が成長できた経験を抜き出して話膨らませる。時には、嘘を盛る。

この時点でもうエントリーシートはただの執筆活動だ。それも結構つまらない。

今の自分をどれくらい構成しているんだ?


そこに抜き出されるのは、企業や面接官から見て「好きでいて欲しい」「経験していて欲しい」事柄であって、自分を投影するものでは全くない。

私が就活生のときも、とりあえず好印象な成長エピソードだけをピックアップして綺麗な言葉で飾り立てていた。

そのネタが本当に頑張ったことだとしても、しっくりこない。人間頑張らずに過ごす時間のほうが圧倒的に長いし、人生の大部分を構成している。人に見せない部分のほうが自分らしかったりする。

かく言う私も、バイトで養った国際性は書いても、エイターでオタなことは書かない。

ゼミで養った多様な視点でものを見る力については書いても、休日にダラダラお菓子食べながら大好きなマンガ読んでることは書かない。

でも、その書かない部分のほうが、自分の魅力だったりすると私は思う。

魅力というのは、人に好印象に見られる点ではなくて、その人の日常が垣間見えたり、好き嫌いが強烈に表れたときだと思う。

先の女子学生も、黒ずくめじゃなくて、好きなファッションとメイクをしたらだいぶ違うはず。日記やSNSでの文章もESとは全然違うに決まってる。

それを「社会人としてふさわしくない」と切り捨てて好印象だけを振りまくことがめちゃくちゃ虚しくて無駄な行為だと、経験した後で気づく。それで時間を無駄にした。

好印象を脱ぎ捨てろ。

黒ずくめの就活生にそう言いたかった。