ぴぃこ、息を吸う

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『日輪の遺産』昭和天皇も特攻隊もいない戦争

今日は終戦の日

70年という節目もあって数日前から特別番組が放送されている。見た人もいるのではないか?

当ブログでは、感動や悲惨さを強調した特別ドラマやテレビ番組とは違った視点で戦争を考える小説をご紹介したい。

日輪の遺産 (講談社文庫)

日輪の遺産 (講談社文庫)

帝国陸軍マッカーサーより奪い、終戦直前に隠したという時価200兆円の財宝。老人が遺(のこ)した手帳に隠された驚くべき真実が、50年たった今、明らかにされようとしている。財宝に関わり生きて死んでいった人々の姿に涙する感動の力作。

あらすじのように、終戦間近の日本を舞台にしたサスペンスだけど、戦時下に生きた様々な立場の普通の人々の葛藤が繊細に描かれている。

3人の男と3人の男

ある日、競馬で負けた丹羽が一人の老人の死を看取って、日記を預かったことから物語が始まる本作。

ストーリーは、戦時中も現代も一貫して3人の男たちを軸にしている。

戦闘経験のない近衛将校の真柴少佐、一兵卒からの現場叩き上げな曹長、エリート官僚の小泉中尉。

立場の違う3人だが、日本の未来と少女たちを守るという使命ひとつでつながっている。

かたや、現代の3人の人生も絡み合っていく。

借金を作り会社をつぶしかけている丹羽、人助けに熱中するあまり家庭が崩壊した海老沢、銭ゲバと名高い地主の金原。

真柴の日記がなければすれ違うことさえなかったのではないか、と思える現代の彼らは共通の使命は持ち合わせていない。だが、丹羽は会社、海老沢は家庭、金原は自身のプライドという、崩壊しそうな個人的拠りどころを守りたい。

過去と現在、何かを守ろうとしている男たちが内心の葛藤と闘いながら大きな謎に迫っていく。純粋なサスペンスとしての側面に人間ドラマがこれほど入り込んだ作品は浅田次郎作品ならでは。

戦時の普通の人々

戦争という本作の大きなテーマに隠れた心の葛藤は、現在の人も共感できる内容にしている。

ところで、戦争を題材とした物語といえば、何を思い浮かぶだろうか?

特攻隊員が主人公の『永遠の0』が大ヒットしたのは記憶に新しい。

最新映画『日本のいちばん長い日』では、オリジナルにはない昭和天皇の決断までの過程が描かれているらしい。

「戦争」という単語を聞いて若い世代でもピンとくる象徴的な存在が全面に出た作品が多いのではないか。

しかし、本作『日輪の遺産』には歴史的な有名人は名前こそあがれど、ほとんどでてこない。

浅田次郎が作った架空の存在だけど、戦時下の日本に絶対にいたであろう普通の人々がストーリーを動かしていく。

あなたは女学生かもしれない

祖母から勤労動員の話を聞いていた私が強く共感したのは、やはり女学生たち。

秘密の任務を担ってる以外は、本当に普通の女の子たちだ。

サラリーマンの男性なら、軍組織の論理と個人の正義の狭間で悩む真柴少佐に自分を重ねるかもしれない。

主だった戦闘、激しい空襲は本作で描かれない。だが確実に戦争は彼ら彼女らの人生を翻弄する。

普通の人々の視点で戦争を見つめることで「自分がもし同じ立場なら」とより身近に考えることができる、フィクションながらも濃い人間ドラマ。

お盆休みの残りで読んでみるのもオススメです。