ぴぃこの転職活動日記

26歳会社を辞めた私の転職活動日記

同情も批判も挟まず淡々と−中村淳彦『日本の風俗嬢』を読んで−

まったり無職生活を満喫しております。せっかく時間があるのだからできなかった読書をしてみたい。

「普段読まないものを」とのことでノンフィクションものを選びました。ノンフィクションライター中村淳彦さんの『日本の風俗嬢』です。

気軽に読みましたが、目から鱗な現実が淡々と書かれていて「これがノンフィクションかー」というのがざっくりとした感想です。

本書のあらすじ

日本の風俗嬢の実態について、データと関係者のインタビューを交えて論じています。

ざっと要約してみるとこんな感じです。

  • 警察の摘発強化により店舗型が縮小し、無店舗型が増えている
  • 「貧困・怠惰のために女性たちは風俗嬢に身を落としている」という見方は過去のものである。
  • 格差拡大・賃金低下のため、ごく普通の真面目な女性が風俗嬢に気軽になっている
  • そのため、日本の風俗店・風俗嬢は供給過多となって競争が激化している

これだけでも、風俗は特殊なもの、というバイアスは解けます。IT業界などでも起こっているような市場原理がきっちり機能していて、性産業も日本経済の一部なんだ、としっかり示されています。

厳しい競争社会

具体的に何人かの風俗店経営者、風俗嬢の話がまとめられているのですが、読むと「スキルのない貧困層の女性が最後にたどり着く場所的」なイメージは吹っ飛びます。普段は品行方正に生きる主婦や女子大生が参入してきたために、嬢たちのレベルが上がってしまった。今や風俗は、生まれ持ったルックスや若さに加え、高いコミュニケーション能力と自己管理能力がなければ稼げない職業なのです。「おいおい、私が今までやってきた派遣の仕事より難易度高くないか??」と思いました。私のようなコミュ障でプロ意識の低い女子は、たとえ職にあぶれたとしても参入してはいけない競争社会となっているのが現状のようです。

筆者の文体

私はノンフィクションを読まなくても、こういった貧困や裏の社会を扱ったネット記事はよく見ます。よくあるのが「こんな現状は間違っている!!」とか「貧困とかww自業自得っしょ」と言わんばかりの両極端なものばかりです。しかし、中村さんの文体にはそれがまるでない。淡々と、日本の性産業の現状とこれから社会に必要とされる姿勢が書かれているだけです。

だから、私自身も「こんな仕事をしている女性たちは可哀想だ」とも「努力せずにリスキーな職を選んだのだから自業自得でしょ?」とも全く思えません。ただ、「あ、こんな風に生きている人がたくさんいるのか」という漠然とした気づきが読後に残ります。どんな職業であれ、きっちり稼いで生きるのは大変なのです。

それなのに、いち職業として認められていない。それどころか、世界的な「女性を救え!性的搾取を禁止せよ!!」という歪んだフェミニズムのもと、摘発や規制はどんどん厳しくなる一方です。それが逆に風俗嬢たちがより生きづらい方向に社会を変えていく、と本書では述べられています。

私もこの意見には賛成で、風俗店も普通の会社のように扱った方が社会全体が得だと考えています。いつまでも影の存在とせず一大産業として認めてしまえばいい。然るべき規制をかけて、労働法も適用して、社会保険制度なども完備させて。法人税もきっちり取れるようになりますし、感染症も蔓延しない。女性たちが抱える問題も軽減されていくでしょう。

両極端の弊害

同情も批判も挟まず淡々と事実をレポートするのは、決して簡単なことではありません。そうした「事実重視」な視点ゆえに筆者の中村さんは批判されることもあるそうですが、物事をややこしくするのはそういった空っぽな正義を振りかざす人たちなんですよね。「偏見なんてない。弱者の味方だ」と言いながらも、誰もが自分のバイアスで物事を判断したい。そのことに気づくにはこうした良質なノンフィクションを読むのはすごく有益だと思うのです。風俗以外でも、良い・悪いで物事を論じる、両極端な意見を撒き散らすことは、問題も解決しないし、誰も幸福にしないのだから。