ぴぃこの転職活動日記

26歳会社を辞めた私の転職活動日記

毛ってなんなのよ?『スイートプールサイド』感想【ネタバレ】

水泳部、プール、水着、夏、男子と女子

このキーワードから何を連想しますか?

競技にかける学生たちの熱い青春や、夏に始まる爽やかな純愛ストーリーですよね。

でも、押見修造の『スイートプールサイド』は全然違います。

ひたすら毛の話

毛が生えないことに悩む中学1年生の太田年彦は、同じ水泳部の毛深い女子、後藤綾子がちょっとうらやましい。ある日、放課後のプールで後藤に呼び止められた太田は、後藤にとんでもないお願いをされてしまった! 「太田くん‥あたしの毛を剃ってくれない‥?」

テーマはズバリ「毛」

爽やかなはずのプールサイドを舞台にしているのに主人公と女子が繋がる要素がなぜか脱毛なのです。

この漫画を要約すると、男が女の毛を剃る。ただひたすらそれだけになります。

でもストップ!!

「え?変態エロ漫画じゃん。そんなん紹介してんじゃねーよ」なんて思わないで、感想読んでください。

ゆるい同志

ひたすらの、脱毛ボーイミーツガール。

なので、緊張感溢れる剃毛シーンが何度もでてきます。ムダ毛剃ってるだけなのに、爆弾の赤い線切るか?青い線切るか?みたいな心臓どくどくものなのだ。

ジョリジョリって音が聞こえてくるんですよ。

てか、太田の剃るときの顔!

とまあ、この時点で

え?男子に頼んじゃうの?

って普通の感覚を持つ我々読者は思うわけです。

デリケートな問題なだけに女の子同士で剃ってもらえばいいのに!ってなる。

しかし、彼と彼女のコンプレックスを展開してみてほしい。

男なのに、毛がない。

女なのに、毛深い。

周りの同性と共有しえないコンプレックスを持つ二人は、もはやこの時点で同志だった。

女(男)同士だから、分かり合えるっていうのは実はそうそうなくて、同じようなコンプレックスを抱くもの同士のほうが互いの気持ちに寄り添えるってことなのかもしれません。

綺麗なもの(ネタバレ)

毛のコンプレックスで繋がっていた2人だが、ある日後藤は太田に剃ってもらうのを辞めると言いだします。 後藤は水泳部の先輩に片思いしていた。先輩への想いがありながら、太田に毛を剃ってもらうのに後ろめたさを感じていたのです。

マンガには明確に書かれていないけど、同じ女として後藤のジレンマはよくわかる。

先輩に近づきたいのに、他の男性である太田に剃毛してもらうわけにはいかない。でも、毛ボーボーな自分では先輩に嫌われると思い込んでしまう。

先輩への想いを断ち切るため、大事なところの毛を刈ってもらおうと太田をプールサイドに呼び出す後藤。

でも、太田は言う。

「剃れないよ、そんな綺麗なもの」

綺麗なもの

綺麗なもの!

そうそう、こんなことは言えないぞ、漢太田!

単なる体質に過ぎないのに、人間関係がうまくいかない、コンプレックスの原因に自分からしてしまっていた後藤。

ここで、私はハッとさせられたのです。

ムダ毛はただ社会的に定義されているものにすぎないし、ムダ毛処理はその社会的定義に準じるための単なる身だしなみだ。

それ以上の意味は何もない。何もない中に意味を見出し、興奮したり幻滅するのが人間なのだ。特に思春期はそれに縛られる傾向が強いですよね。

でも、太田はそんな社会的意味付けを中学生にして飛び越えました。太田にとって、後藤とちょっぴり変わった青春を作ってくれた後藤の毛は綺麗なものに見えた。

そう、毛という特殊なものを扱っているけれど、これは一人の少年の成長物語として成立しているのです。

こんなにフェチシズムに溢れた作品なのに、読後はとても爽やかで微笑ましくなってしまう。

脱毛の悩みを青春マンガに昇華させる天才、押見修造の作品をもっと味わいたい方のためにリンク貼っときましたのでどうぞ。

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